§3 Geodesic Dome パネル工法に必要な幾何学量

 §2において、Geodesic Domeの形状を決定する手法を示しました。しかし、実際に構造物としてのドームを作るためにはもう少し必要な数値を求める必要があります。ここでは、パネル工法によってドームを作ることを前提に話しを進めることにします。

3-1 x-y-z座標系


 まず最初に座標系を定めることにします。もとになる正20面体の向かい合う頂点(例えば図に示す点aと点b)を結んだ軸をz軸とします。
 z軸に外接球の中心Oにおいて直交する平面をx-y平面とします。
 z軸の正方向の頂点である頂点aとそれに隣接する頂点の一つ(図では頂点c)と外接球の中心Oで定まる平面をz-x平面とします。x-y平面とz-x平面との交線をx軸とします。x軸の正方向は頂点cと同じ側とします。
 最後に、z-x平面と外接球の中心Oで直交する軸をy軸とします。y軸の正方向は右手系として定めます。

 正20面体の頂点の座標値がわかれば、§2で示した手法で各Geodesic Domeの頂点座標は容易に決定することが出来ます。頂点座標がわかると、Geodesic Domeを構成する3角形の辺長を決定すること、つまり3角形の平面形状が決定できます。

<捕捉>
 実際には、正20面体の対称性から、頂点a,c,d頂点の座標値がわかればこれをz軸周りに72degづつ回転することによって全ての頂点座標が決定できます。外接球半径を1.0とした場合の頂点a,c,dの座標値を以下に示します。

頂点
a
0.00.01.0
c
0.89442719100.00.4472135955
d
0.72360679770.5257311121-0.4472135955

3-2 角度の定義

 さて、Geodesic Domeを構成する3角形の平面形状を決定することは出来ましたが、これではまだ実際に構造物を作ることは出来ません。Geodesic Domeをパネル工法で作る場合のパネル構造の模式図を示します。


 図に示すように、角材で3角形のフレームを組み立て、これに合板などを張りつけて一つのパネルにします。パネルには厚さがあるため、隣接するパネル同士が隙間なく組み上げられるようにするためには、部材加工のためにいくつかの角度が必要になります。
 外接球の中心Oとパネルの頂点1,2,3によって、△123を底面とする3角錐を考えることにします。この3角錐の側面を構成する3角形(例えば△1O3)は斜辺の長さが常に外接球半径Rに等しい2等辺3角形になります。この2等辺3角形の底角をβとします。△123の各頂点の面内角をαとします。αとβは△123の各辺長が決まれば容易に算定できます。


 次に、3角錐の底面と側面とのなす角度をδとします。更に、隣接する側面同士のなす角度をγとします。δとγは面のなす角度なので空間幾何の知識が必要で、αやβに比べると少し算定に手間がかかりますが、これも△123の頂点の座標値が決まれば決定することが出来ます。
 △123は一般的には正3角形ではありません。そこで、各頂点の対辺の辺長Lには頂点の番号を添字として表すことにします。例えば、頂点1の対辺2-3の長さはL1と表すことにします。
 角度についても同じように添字をつけて表すことにします。各頂点に固有の角であるαとγには頂点の番号を添字とします。上の図について考えると、α1でありγ3です。
 各頂点の対辺に固有な角であるδとβには頂点の番号を添字とします。上の図では、δ1でありβ2です。