§2 正多面体とGeodesic Dome の生成過程

2-1 概要

 §1で Geodesic Dome を定義しました。しかしこれではGeodesic Domeは無数に存在する事になりますが、実際に構造物を作る場合には、幾つか注意すべき点があります。

a.Geodesic Domeを構成する3角形の辺の比が1に近い値をとる。言い換えれば、正3角形に近い3角形である事。
b.Geodesic Domeを構成する3角形の種類がなるべく少ない事。

 aは、力学的にみてバランスのとれた構造にするための条件であり、bは、実際の部材加工を容易にするための条件です。この2条件を満たすGeodesic Domeの生成法を考えます。

2-2 正多面体

 球に内接する正3角形で構成される多面体構造には、正4面体、正8面体そして正20面体の3種類が存在することは周知のとおりです。
 §1の定義に従えばこれらの正多面体構造もGeodesic Domeの一種だと考えることが出来ます。しかし、外観から受ける印象はごつごつしていてとてもドームとは呼べません。この正多面体をもとに、より球形に近い多面体構造=Geodesic Domeを生成する手法を以下に示します。

2-3 Geodesic Dome の生成

 まず始めに、正多面体を構成する各正3角形を更に細かい正3角形に分割します。そして、分割した正3角形の頂点の中で、外接球上にない点を外接球の中心から球面上に投影します。投影された頂点を新たな頂点とした3角形(必ずしも正3角形にはならない)によって全ての頂点で球に内接する3角形で構成された多面体構造=Geodesic Domeが生成されます。
 さて、球面上にない頂点を球面上に投影することによって、生成された新たな3角形には歪みが生じて必ずしも正3角形にはなりません。特に、もとになる正多面体の面数が少ないほどその歪みは大きくなると考えられます。そこで、実際には正20面体をもとにしてGeodesic Domeを生成することにします。

 正多面体を構成する正3角形の分割方法によって二つのGeodesic Dome系が考えられます。以下にそれぞれについて説明します。

2-3-1 ClassT

 最も自然な分割方法は、正20面体を構成する正3角形の3辺を等分割して、この点を通り各辺に平行な直線で分割する方法です。この分割によって生成される系をClassTと呼ぶことにします。図に、最も分割数の少ない2分割(ClassTD-2)の生成過程を示します。
 まずはじめに、正3角形の各辺を2等分してこの点を通り各辺に平行な直線で分割することによって4つの正三角形に分割します。
 次に、外接球上にない正3角形の頂点を球の中心から球面上に投影します。そして投影された頂点を3角形の頂点とする新たな3角形を生成します。
 正20面体を構成する全ての面に対して同じ操作をすることによってClassTD-2の完全な多面体構造が生成されます。
 こうして生成されるGeodesic Domeの面の数は一辺の分割数をnとすると20n×n面になります。n=2の場合は80面体です。
 n=2の場合、投影の対称性から赤く示した面は正3角形になり、青で示した三つの3角形は2等辺3角形になります。


2-3-1 ClassU

 もう一つの分割方法は、正3角形の各辺を、それに直交する線分で分割する方法です。この分割方法では幾つか注意する点があります。
 まず、分割数は2の倍数でなければ3角形へ分割することが出来ません。更に、分割された3角形のうち、もとの正3角形の辺に隣接する3角形は、その辺に接続する隣の3角形と合せてはじめて正3角形になります。
 図に分割数n=2の場合について示します。n=2の場合は、分割された全ての3角形はもとの正3角形の3辺に隣接しているため、全てその辺に隣接するもう一つの3角形と合せてはじめて正3角形になります。図では正20面体を構成する隣接する2つの正三角形を分割して色分けしてあります。二つの正3角形の稜線を挟んだ同じ色に塗られた部分を一つの3角形として扱います。後の操作はClassTの場合と同じです。
 ClassUでは、分割数をnとすると15n×n面になります。n=2では60面体です。
 n=2の場合、生成されたGeodesic Domeは1種類の2等辺3角形で構成されます。