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AD変換A/D conversion

 音の実体とは空気の振動による大気の圧力の微小な変化です。その振動の波=音波は本来連続した値を持っています。
 音波は二つの特性によって表すことができます。音波の音圧変化の大きさは音量を表します。音波の周波数(通常1秒間の振動数Hzで表されます。)は音の高さを表します。アナログレコードは、音波の振動をそのままレコード盤の音溝に刻んだものです。
 本来連続量で表されるレコード盤などのアナログ音源をCDに記録するためには、連続量を離散的なデジタル量に変換することが必要になります。これをAD変換(アナログ-デジタル変換)あるいは量子化すると言います。

音声波形のデジタル化の概念図

 左の図の破線で示したのが元になる音声波形です。図の横軸は時間軸、縦軸は音の強さを表しています。
 音声波形をデジタルデータで表すためには、音声データをある時間間隔で計測することが必要になります。この1秒間あたりの計測回数をサンプリング周波数あるいはサンプリングレートと呼びます。では音に対してはどの程度のサンプリングレートが適切なのでしょうか?
 人間の耳の可聴範囲は20Hz〜20000Hz(=20kHz)程度といわれています。可聴範囲は年令によって変化し、一般的に高齢になるほど可聴範囲が狭くなります。

年令による可聴周波数帯域の変化
『天文と科学のページ』 http://www.sunfield.ne.jp/~oshima/omosiro/oto/kacyou.htmlより

 図は、被験者の年齢ごとに判別できる最も高い音(青の実線/左側のスケール)最も低い音(ピンクの実線/右側のスケール)を測定したものです。人間の耳の特性から、最高でも20kHzの高音を表すことが出来れば十分だと考えられます。

 少し具体的に音程について考えてみます。西洋音楽における最も基本になる音の高さはハ長調の“ラ”の音です。西洋式には“A4”です。その振動数は440Hzです。

440Hz ←クリックすると440Hzの正弦波を聴くことができます。

音程が1オクターブ上がる毎に振動数は2倍になります。ピアノの最高音はC8で4186Hzです。音楽を構成する音が単純な正弦波(サインカーブ)であれば、高々4000Hz=4kHz程度を表すことが出来れば十分ということになります。しかし、正弦波はお聴き頂けばわかるように、無機的な音色です。

音色と音声波形の違い

実際の楽器特有の音色は、基準となる振動数に様々の周波数の倍音が色々な強さで重なって、豊かな個性が現れます。同じA4の音程でも、上図に示すようにピアノの波形とギターの波形では随分形が異なっていることがわかります。この基準振動に加えられる倍音をうまく表現することが音質の表現力に繋がるのです。
 そのため、単に楽曲の音域をカバーするだけではなく、人間の耳の可聴範囲の音を出来るだけ忠実に再現することが楽器や歌声の持つ豊かな個性を表現するために必要なのです。

 一般的に連続する変化量をデジタル化する場合、元の変化量の周波数の倍程度のサンプリングレートで測定を行うことで元の変化量を適切に復元できると考えられています。音については人間の可聴範囲の上限値を余裕を見て20kHzとして、その倍程度の40kHz程度のサンプリングレートであれば適切な値と言えるでしょう。実際には、44.1kHz(1秒間に44100回)が用いられています。

 さて、こうして決めたサンプリングレートで音声波形の値を読み取ります。音の強さ(最初の図のT1,T2,・・・と破線で示した音声波形との交点)の値は実数になります。これをデジタル変換するためには読み取った実数値に最も近い整数値として量子化することになります。この時の分割の細かさを量子化ビット数と呼びます。
 通常の音楽CDの規格では量子化ビット数は16ビット=216=65536段階に分割されます。つまり、デジタルオーディオ機器で表現できる最大の信号を65536分割した大きさを最小単位として表現しているのです。最近では高音質を求めて量子化ビット数を24ビット=224=16777216段階に細分化する規格も使用されています。

 理論的には、音を忠実に表現する=原音の音声波形を忠実に再現するためには出来るだけサンプリングレートと量子化ビット数を大きくしてやることが良いことがわかります。しかし、サンプリングレートと量子化ビット数を大きくすることは記録すべきデータが多くなり、再生装置に高い処理能力が必要になります。また、ある程度以上のデータの精緻化は人間の聴覚的な解像度を越えてしまい、その差を実感することが難しくなります。これらを考慮して音楽用CDの規格が決定されているのです。
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